書籍名

  リストラなしの「年輪経営」 

  著者:塚越 寛     発行所:㈱光文社

   

2.内容

― まとめ ―

経営にとって「本来あるべき姿」は「社員を幸せにするような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」ことであり、売上げも利益もそれを実現するための手段にすぎない。

・会社が永続する条件は、長期的視野にたった「遠くをはかる」経営を心掛けること。 

 景気は山あり谷ありで、いい時も悪いときも無理をせず、低成長を志して、自然体の経営に努める、これを「年輪経営」と称し経営の理想とする。

―内容―

1.会社は社員を幸せにするためにある

 伊那食品工業の経営の根本は「会社は社員を幸せにするためにある」である。そのことを通じていい会社を作り、地域社会に貢献する」、それを実現するためには「永続する」ことが一番重要だと考えている。

会社が永続しなければ、そうでなければどこかで社員の幸せを断ち切ることになってしまうからである。

2.「良い会社」ではなく「いい会社」

 会社の経営とは「会社の数字」と「社員の幸せ」のバランスをとることだと考える。

「良い会社」のイメージは、売上げや利益が拡大し、株価が上がっているような数字重要視している一般的にいわれる良い会社で、これに対して「いい会社」とは単に経営上の数字が良いだけでなく、会社をとりまくすべての人々が、日常会話のなかで「あの会社はいい会社だね」と言っくれる様な会社と考えている。

社員はもちろん、仕入先、売り先、一般の消費者からも、そして地域の人たちからも「いい会社だね」と言ってもらえるようないわゆる好感度が高い会社のことだと考えている。

3.経営は長期視野に立って行なうべき(「遠くをはかる」経営)

 現在大多数の企業は短期の利益を追いもとめる余り、「今が良ければ良い」「数字が良ければ良い」という経営がまかり通っている。

アメリカ型の経営手法は、人を幸福にしないと考える。

4.急成長はせず、年輪のような経営を目指す

 伊奈食品工業は1958年創業以来、2005年までの48年間ほぼ増収、増益をしてきた、寒天という地味な商品を自ら市場を開拓しながら、さらには、会社の永続を願い、「遠くをはかる」経営を心掛けた結果である。

 会社なので、山あり谷ありで、いい時も悪いときも無理をせず、低成長を志して、自然体の経営に努めた結果であり、これを「年輪経営」と称している。

 木の年輪のように少しづつであるが、前年より確実に成長していく。年輪はその年の天候により違うが確実に前の年よりは確実にひろがっている、年輪の幅は狭くても確実に広がっていくことが大切。

木々は無理に成長しようとはしないものだ、年輪は幅の広いところほど弱く、逆に狭い部分は堅くて強いもので、この点も見習うべきと考ている。

5.ブームで得た利益は、一時的な預かりものと考える

 フォローの風に乗った時に、これが自分の力だと思い違いし、過大投資をして、後々痛い目にあうことがある。ブームに巻き込まれ場合は「ブームで得た利益は、自分の力で儲けたものでないから、人様から一時的な預かっているもの」と考える。一時的に預かっているものだから将来は必ず出て行くものというわけである。逆に何かの事情で、自分の過ちでなくて損した場合は、「自分の力でなくて損したら、自分の罪じゃなくて損したら、それは人様に預けてあるもの」と考える。年輪経営を理想にして「遠きをはかる」商売をコツコツ続けていれば、いずれ必ず帳尻は合ってくるもだと思ってる。

6.会社の成長とは社員が「前より幸せになった」と実感できること

幸せを感じるには、より給料が増るとか、より働きがいを感じるとか、より快適な職場で働けるとか、さまざまなことがあるが、これらの実現と会社永続のバランスを取りながら経営していくべきだと考えています。

アメリカの金融危機に端を発した今回の景気後退は、経営者にとって大きな試練と考える。

しかし、その中で、自分の会社は何のためにあるのか、会社の成長とは何なのかを見つめ直すことは、とても有意義なことかんがえる。

7.利益は人の犠牲の上にたって生まれない

利益は、その生み出し方と使い方が大事なものと考える。

商売の基本は「売り手」と「買い手」が対等であることから始まる。

会社の目的は「利益」では無く「永続」に価値を見出そうとしており、一時の利益の為に良好な仕入れ先を失うような愚かなことはしていない。

これは、自分たちが販売する場合でも適正価格での購入をお願いしており、余り無理な場合は断る場合もある。

一方、企業内では利益の為に社員が犠牲になっているような会社を多く目に見ます。

(人件費、福利厚生の質を落とすなど)

「売上げや利益は社員を幸せにするための手段にすぎない」と考えており、利益や売上げを競う企業は「本来のあるべき姿」から離れていると考える。

8.利益は健康な体からでる排泄物と同じ

健康体ならば自然と毎日排泄物は出てくるものだ。それがが目的の人はいない筈。

「健康な会社」であれば「利益」という排泄物は自然に出てくるはず。「利益」を出そうと思えば「健康な会社作ることを考えればいいわけです。これは人間も同じで「バランスいい」会社のことです。

9.幸せになるには、人に感謝されることをやるべき

公に奉仕して、人から感謝されるようなことを実践する。これは仏教では「利他」といい

自分自身で幸せを実感でき、最後には自分に戻ってくるくることもある。

これも企業永続の条件の一つと考えている。

-いい会社をつくる10箇条―

 (1)常にいい製品をつくる

 (2)売れるからといってつくり過ぎない、売り過ぎない

 (3)できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしない

 (4)お客さまの立場にたったものづくりとサービスを心がけ

    る。

 (5)美しい工場、店舗、庭づくりをする。

 (6)上品なパッケージ、センスのいい広告を行う。

    (7)メセナ活動とボランティア等の社会貢献を行なう。

    (メセナ:企業が主として資金を提供して

 文化、芸術活動を支援すること)

 (8)仕入先を大切にする。

 (9)経営理念を全員が理解し、企業イメージを高める。

(10)以上のことを確実に実行し、継続する。

                         -以上-